120329 天竜

今回はソロツーリングではなく、トリニティーの切込隊長、根田さんとのサシツーリング。目的地は長野県下伊那郡売木村。もちろん僕は行ったことがない。ルートは完全に根田さんにお任せで、片道400キロを100%下道、昼メシ以外の休憩はほぼトイレと給油のみで10時間走り続ける。

もともと今回はB40で行くつもりだったが、あらかじめ過酷な状況が予想される中、先週の西伊豆で不安要因を残したB40ではなく、超安定中のTR6Cで行くことにした。

写真はGPSによると静岡市葵区の竜爪山付近(根田ルートは後からGoogleマップを見ても道が記載されていなかったりするので、GPSで確認するしかない)。時刻は午前11時ごろ。このあたりまでは富士宮市の桜峠など、低速のタイトなコーナーが続く山道ばかりで非常に調子が良かったのだが……
a0255337_0175023.jpg


静岡市を抜けて今回のツーリングの白眉、国道362号線を北上する藁科街道に入ると状況が一変する。平衡感覚を失うほどのアップダウンと中高速のコーナーが、これでもかと続く。この道と較べれば今までの道は安全なジムカーナのようなものだった。一昨年の西伊豆での転倒の反省を念頭に置き、いまの自分は質量200kgを超える塊なのだと常に意識しながら、下りでは特に速度を殺して慎重に廻る。

ジェットコースターのような速度と慣性の恐怖で硬直した僕を尻目に、異次元のスピードで眼前から消える根田さん。「今日は意外と根田さんに付いていけてるな……」とか思ってた気分が一気に吹き飛ぶ。その直後、大井川本線の千頭駅前で昼メシを食べることになったが、爽快な笑顔の根田さんの横で、僕はあまり食が進まなかった……

メシのあとはまた比較的タイトな低速コーナーが続き、ちょっと自信を取り戻したりしながら、今回のツーリングも片道の道程90%を越え、目的地の宿に着く直前に、笑うしかないような、しかし、笑えない事件が起こった。

県道1号線を北上中、工事により通行止めの看板。仕方なく迂回路に入る(後ほど工事現場の人に聞いたら正式な迂回路ではなかったらしい。なぜなら迂回路とするには道幅が狭すぎるから)。道路というよりほとんど地元民のための歩道。暗く陰ったコンクリートの路面には、至る所に濡れた落ち葉と泥が溜まっている。

道幅3メートルほどの緩い上り坂の直線(コーナーではない)を登ろうとしたとき、ローギアのまま不用意にスロットルを開けた瞬間にタイヤがグリップを失った。僕は足払いをかけられたように一瞬でバイクから放り出され、地面にベチャっと叩きつけられる。エンジンの回転音がニュートラルで空ぶかししたようにキレイに上がりながら、うつぶせに倒れた僕の背後で鳴っている。少しずつ定位を下げながら…… 「え? 落ちてる?」

高校生の頃、友達に聞いた与太話、国道20号線大垂水峠の崖下で墓標のように眠っているというRZやガンマの伝説が脳裏によぎる。五体に大きな違和感が無いことを確認したあと、朦朧とした意識のまま無理やり立ち上がり、崖下を覗き込むと(当然ガードレールなんて無い)3~4メートルほど下に僕のTR6Cがアイドリング状態のままキレイに横たわっている。

あまりにも非現実的な光景と、転倒のショックで中々状況が認識できない。「この光景どっかで見たことあるな…… 昔のテレビだっけ? 映画だっけ? で、この後に絶対ドカーンって爆発するんだよな…… って爆発??」

あわてて崖下に降りて(階段やスロープなんて当然あるわけ無いので木の根や岩を足場にして)イグニッションを切る。すわ廃車かと一瞬覚悟したが、崖下には伐採された木の枝が山積みになっており、パッと見たところ想像よりもトラにダメージは無いようだ。

とりあえず根田さんと一緒にバイクを起こすが、このままツーリングを続行するのは不可能と即判断。今日はB50に無理矢理タンデムさせてもらって(根田さんにはみっともない真似させてすいません……)宿に向かうことに。晩御飯を済ませて、ゆっくり温泉につかりながら今日の転倒を思い起こす。

改めてバイクやタイヤの能力、もちろん自分の能力を考えると、教習所で習ったような2速発進やノッキング寸前でもいいから高めのギアで走るべき状況だった。道中、同じような悪路は何度か通り抜けたのだが、そのとき転倒しなかったのは単に運が良かっただけだと思う。僕の場合は本で読んでも頭に入らず、痛い目に遭わないと学習できないタイプの性格。もう二度と同じような誤ちはしないよう心がけます……

翌朝、すぐに保険会社のロードサービスを呼び、クレーンで釣り上げてもらう。ギリギリの道幅だったが、なんとか成功。プロの手際の良さに感動して思わず写真を撮ってしまった(当然それどころじゃない状況なんですが……)。
a0255337_0192944.jpg


根田さんとはここでお別れ。根田さんはB50で東京へ向かう。僕はロードサービスのお兄さん(滅茶苦茶いい人だった)と二人で、通行止めの解除時間まで地元の話をいろいろと聞かせてもらったりして時間をつぶしてから、お兄さんの手配してくれた軽トラのレンタカーにトラを乗せて東京へ帰ることに。写真はロードサービスのお兄さんに「万力」というロープの結び方を教わってバイクを固定したところ。
a0255337_0194076.jpg


この日の長野は気温20度近い最高の天気。窓を開け放したマニュアルの軽トラで中央高速を走るという体験も新鮮。この牧歌的な喜びと、後ろに積んだトラの修理を想像したときの憂鬱さ。大きな怪我が無かったとはいえ、転倒という事実の後悔と自責の念。心の中で様々な感情が複雑に渦巻きながら、東京までの300kmの距離を走る。

いつもみんなに心配や迷惑をかけて、こんな転倒や修理を繰り返しながら、僕はなんでバイクに乗っているんだろうか…… 底抜けに晴れた高速道路を運転中、頭の中では、くるりの「ハイウェイ」がエンドレスでループしていた。


[PR]
by motorshack | 2012-04-01 02:44 | TR6C日記
<< フロント周り修正 120324 西伊豆 >>